|
|
| 労務管理Q&A |
Q
A社は、製鉄業を営んでいる会社であるが、これまで工場内において、、作業員の転落事故や台車の接触による負傷事故などが時折発生していた。そこで、A社としては、このような事故の発生を未然に防止するために、安全に作業を遂行していくための具体的なガイドラインを作成しようと考えている。法的な面からどのような点に注意したらよいか。
A
使用者は、労働契約上の付随的義務として、労働者が労務を提供を行う過程において、労働者の生命・身体・健康の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負っている。
安全配慮義務の具体的内容というのは、画一的に決定されるものでなく、個別なケースごとに検討していかなければならない。A社において工場内での安全な作業遂行のための具体的なガイドラインを作成する上では、当該工場内でどのような事故が予想されるのか(予見可能性)、そして、そのような予想される事故を避けることができるのかどうか(回避可能性)を個別具体的に検討する必要がある。そして、そのような結果に対する予見可能性、回避可能性を前提に、結果回避義務として何を行うべきかを確定することになる。
工場内において、転落による死傷事故の発生が予見可能であった場合には、あらかじめ転落防止のための措置(たとえば、手すりをつけたり足場をより安定させたり、作業手順を簡素化するなど)を講ずることによってそのような結果を回避する可能性を検討すべきである。
同様に台車の接触による負傷事故が予見可能である場合には、あらかじめ接触事故を防止するための措置(例えば、台車の運搬レールを作成して周知徹底させるなど)を講ずることによってそのような結果を回避する可能性を検討することとなる。(もちろん過去に生じていない事故であれば予見可能性が認められないということではないので、あらゆるリスクをさまざまな角度から検討しなければならない。)そして、そのようなさまざまな可能性の中から、結果回避義務の具体的な履践として、1つまたは複数の施策を選択して実践に移すという手順となる。
Q
私傷病により休職していたものが復職する際には、主治医の診断書を使用者に提出することを義務付けているが、主治医の診断書に「復職可能」という意見が記載されている場合、使用者としては復職を義務付けられるか。
A
復職可能かどうかは、当該休職者が通常業務に完全に果たすことができる健康状態に復したいえるか否かという観点から、最終的には、使用者の責任において判断すべきことであり、主治医の診断書に「復職可能」との意見が記載されていたとしても必ずしも復職が義務付けられているわけではない。
使用者としては、主治医に対して業務内容をよく説明して、本当に健康上耐えられるものであるかどうかなどの事情を聴衆すべきであり、また必要であれば、使用者の業務内容をよく理解した医師の診断を命じ、複数の医師の意見を踏まえて、多角的、総合的に判断すべきである。
使用者としては、労務提供義務が完全に果たせることについては労働者が証明義務を負担していることを前提として、労働者が完全な労務提供を行いうるものであるのかどうかという点について合理的な疑義がある場合には、その疑義を解消するためのさまざまな方策を講ずるべきであり、主治医の診断書を無批判に受け入れてしまうような対応は、かえって復職後のトラブルを生じさせることにもなりかねないので注意が必要である。
(弁護士 山中健児著より)
|
|
|